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中国の経済的弱点とブレトンウッズ体制への挑戦:米国はどう対応すべきか?

中国の湖北省宜昌市の建設中の商業家屋、2023年10月18日撮影(写真提供Costfoto/ Nurphoto、Getty Images)
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中国の湖北省宜昌市の建設中の商業家屋、2023年10月18日撮影(写真提供Costfoto/ Nurphoto、Getty Images)

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エグゼクティブサマリー

最高権力者習近平国家主席の指導のもと、中国経済は弱体化の一路をたどってきた。もはや彼の政権が始まる30年前に国家が期待していたような成長率を支えることはできない。その結果、中華人民共和国(中国)は成長する経済圏に肩を並べる持続的成長を刺激するのに必要な金融資源を集めることはできなくなった。

中国には深刻な構造的問題がある: 人口減少;社会福祉の資金不足;深刻な汚染;輸入燃料、食糧、鉱物資源への依存など。懐疑的な習主席は、主要な民間セクター、産業、卓越したエグゼクティブなどを密かに傷つけ、それによって中国共産党(CCP)の先端技術産業で自給自足を得るという野望も不可能になった。主要デジタルサービス業界への攻撃はサービス基盤の経済への変換の妨げとなっている。中国内で重要な不動産セクターでの危機は銀行と公共金融機関の財務安定性を脅かしている。

若者の高い失業率、家計の富の70~80パーセントを誇ってきた不動産セクターの崩壊、習の独裁主義的な監視体制は強まる一方で、不十分な教育や社会サービス、コロナ後の世界経済の停滞など、構造的問題に取り組まずに、中国政府が人気を維持することはできなくなってきている。

社会サービスが粗悪で、不動産業が弱体化しているため、中国人はより多くを貯金し、消費の低迷に貢献、消費者が経済成長を刺激する力は低下している。中国は生産過剰で消費が極端に少ないため、製品は国際市場に低価格で投棄され、貿易相手は中国からの輸入を制限する対策を打ち出している。

世界的に見て、第二次世界大戦後のブレトンウッズ法を侵食しようという試みは、経済的に成功したとはいえない。継続する重商主義に加え、軍事的にアグレッシブな傾向は米国、増加しつつある西側の同盟国、一部近隣の発展途上国までも刺激し、身を引かせている。

中国における経済的及び地政学的問題が蓄積していることは、米国やその同盟国にとっては、習の通商及び地経学プログラムに対抗し、変化を促し、西側のルールに基づいた秩序を覆そうとする習のたくらみを覆すチャンスとなる。

このレポートは以下の分野を含め、弱まりを見せる中国の経済的、地政学的状況に影響を与えるプログラムやツールを展開することを分析し、勧めている:

  • 通商政策: 対策には米国通商法及び世界貿易機関(WTO)規則により、関税の維持、ダンピング防止、対抗関税などが含まれる。貿易の方策は米国経済と国家安全に重要な主要産業を標的とする。
  • 投資政策: 米国は軍民両用技術セクターへのインバウンド直接投資と中国へのアウトバウンド直接及びポートフォリオ投資へのコントロールを増加させるべきである。これらには両用、軍事セクター、ハイテク産業などのように反競争的中国補助から利益を得る、機密部分への新たな、拡張した適用を含む。制約の拡張には、特に商務省の団体リスト又はホワイトハウスの重要先端技術に関わる一部の企業など、懸念されている産業や企業への株式投資の制限を含む。
  • 輸出コントロール: 報告では中国による機密技術開発又は不法な取得を徹底的に調査し、中国政府がこれらの技術にアクセスできる能力を制限するためにもっと広範に輸出制限を展開すべきであることを示唆している。
  • 金銭的制裁: 調査によると中国の銀行による世界レベルでの違法な薬物取引のためのマネーロンダリングが示唆され、米国の制裁や通商制限も回避している。さらに海外で事業を行う中国企業による脱税も報告している。多くの著名な銀行は強制労働者を雇い、その他の国際的に認識されている人権の虐待を行うビジネスに関与している。このような実態と戦い、阻止するために、レポートでは、愛国者法セクション311またはその他マネーロンダリング規制により、関与があるとされる銀行をSWIFT及びCHIPSクリアランスシステムから排斥することを含め、的を絞って選択的に制裁を行うことを述べている。
  • ブレトンウッズの代替を打ち立てようとする中国側の努力を阻 止する: 上海協力機構(SCO)及びBRICS(ブラジル、ロシア 、イ ン ド 、中 国 、及 び 南 ア フリ カ を 含 む グ ル ー プ )の よ う な 独自の通商グループ、又はアジアインフラ開発銀行及び一帯一路(BRI)のような金融機関を通じて、代替の貿易決済、クリアランスシステム、デジタル通貨の開発により、中国は体系的にブレトンウッズの西側体制に代わるものを構築している。中国の重商主義により良く対抗するためのWTO改革及び国際通貨基金(IMF)や国際銀行の改革は、変化に対するWTOの厳格な規則のため、中国、その同盟国、一部発展途上国の徹底的な反対により成功の可能性は低い。レポートは、環太平洋連携協定(現在は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、またはCPTPPとして知られる)に再加入、米国-メキシコ-カナダ条約(USMCA)を新規参加国に提供する、双方向通商解放合意の利用を増やすなど、中国の通商合意の代替ネットワークを構築することを提案する。同盟国と開発援助を調整することによりBRIやBRICSの代替を強化し、通貨の安定性と解放された経済を維持することが選択となる。

まとめると、上記の各提案は、貿易増加に依存し、西側資本を集約し、不法に技術を取得し未来産業で競争力を強化させようとすることにより成長を再活性化させようとする中国の試みを弱らせるものである。これらの提案は、弱体化しつつある金融セクター及び政府のバランスシートのため中国が必要とする西側資本への中国のアクセスを制限する。上記の方策はまた中国が国際市場で西側産業を退去させようとする動きを制限する一方、西側技術への中国によるアクセスを防ぐものである。

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