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Hudson Institute

ヘッジング:軍事力の再考支配後の時代への設計

bryan_clark
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Senior Fellow and Director, Center for Defense Concepts and Technology
dan_patt
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Senior Fellow, Center for Defense Concepts and Technology
2023年4月21日、ノース・カロライナ州キャンプ・レジューンにてテクノロジー作戦実験イベント23.1 中に海上に墜落した無人表面機「エイミー」を回収する米国海兵隊員(米国海兵隊提供)
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2023年4月21日、ノース・カロライナ州キャンプ・レジューンにてテクノロジー作戦実験イベント23.1 中に海上に墜落した無人表面機「エイミー」を回収する米国海兵隊員(米国海兵隊提供)

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エグゼクティブサマリー

20世紀後半から21世紀にかけてアメリカ軍は潜在的、現実の敵に対して広く優位性を維持してきた。強固な同盟国ネットワークと世界で最も旺盛な研究開発に支えられ、米国防総省は世界的なスタンスを展開し、敵国に比べ卓越した能力を駆使してきた。米国軍は砂漠の嵐作戦や連合国でネットワーク化された精密攻撃で、冷戦時代の研究開発の結果を立証することができた。ベトナム、イラク、アフガ二スタンにおける不規則な作戦や反乱は米国軍の努力を台無しにしたが、アナリストたちはそれらの崩壊を米国軍に使用可能な能力の欠如というより、戦略と使途の失敗によるものと評価している。1 米国軍優勢の時代は、予想通り今終焉に向かっている。現在も続くウクライナ、中東、コーカサスの紛争で、国家も非国家グループも激増し続け、国防総省が冷戦時代に開拓したセンサー、精密兵器、ネットワーキング、処理能力を駆使している。2商業・軍事技術を利用し米国軍と歩調を合わせている脅威、中華人民共和国はセンサーの精密攻撃ネットワークを広範に展開し、海上、沿岸、空中すべての領域で誘導兵器発射装置を装備している。

米国軍は最新の関連能力と非常に技術力の高い技術者を誇り、直面するかもしれない多くのシナリオで、依然敵軍よりはるかに優れている。しかし、このリードは狭まってきている。例えば中国が急に台湾に侵略するなど、一部のシナリオや地点では、米国は不利な状況にあり、許容できないような損失のリスクを負わずに成功できるかどうか不明である。

本研究では、台湾への侵略など特定の攻撃行動に対抗するにあたり国防総省が直面し得る課題を分析し、米国の戦争抑止を妥当な出費で維持するための戦略的、作戦的アプローチを提案する。本研究は米国軍が直面する課題と、過去に軍の優位性を維持するために特別部隊を使ったところから始まる。例えばソ連の数量的優勢が中央ヨーロッパでNATO北大西洋条約機構を制圧する恐れがあった時、国防総省は核の力に頼り、ワルシャワ条約の侵害に対する障壁とした。

第2章ではヘッジングを定義し、抑制的戦略を支援し、可能性は低いが重大な影響のある特定のシナリオに関連するリスクをどうやったら低められるかを扱い、歴史的な例も述べる。3現段階では、他の状況、例えば中東の輸送船を防衛する、台湾侵略に対抗する、NATO諸国をロシアの侵略から防衛することなどにおける能力が犠牲になっているが、中国の台湾侵略などの偶発事象に取り組むために米国軍は最適化し続ける。ヘッジフォースがあれば台湾侵略の際に米国が直面するリスクを低められる可能性があり、米国軍はもう少し柔軟性を持てる。

第3章では直前通知の台湾侵略に対応するために設計されたヘッジフォースについて説明し、第4章ではヘッジフォースを中国の攻撃に対抗する他のアプローチと比較する状況を用いて、その効用を評価する。既存の一般目的の武力を交換するのではなく、ヘッジフォースは侵略を遅らせ、混乱させ、標的のチャンスを増加、改善することによって戦闘機、爆撃機、潜水艦、その他の海上・陸上ミサイル発射装置を補強することになる。主に無人システムに依存することにより、ヘッジフォースは一般目的の軍事力を育成したり補強するよりも費用がかからず、大量の無人システムを守備に回し、実験する機会が得られる。

第5章では国防総省がヘッジフォースを導入するための推薦理由を述べる。特定のシナリオに焦点をあてるためリスク解除が意図されている。台湾ヘッジフォースは米国インド太平洋部隊(INDOPACOM)が国防総省の分析、購買組織の支援を得て管理するべきである。さらに、主に無人だが台湾のヘッジフォースは人間の技術者、メンテナンス技師、統率者が必要で、合同タスクフォース(JTF)のもとに組織され、下請けと購買の権限を持つべきである。

国防省は優位性を失った後も有利になり紛争を避けるには創造的で適用力がなければならない。ヘッジフォースは米国軍の潜在的な損失を減少させ、台湾侵略があった場合、中国などの攻撃側にとってリスクを強める。その結果、台湾侵略を止めるにはあまり重要でないが他の作戦では必須となる軍のフォーメーション、水陸両用車両や航空機などを維持できる。

国防省はヘッジフォースを開発し配備する際困難に直面するだろう。擁護する軍事力がなく、国防省の研究開発や購買組織からも遠くはなれているので、台湾のヘッジフォースはペンタゴンの上層部が常に注意を向けておくことが必要だろう。しかし、最近の購買・予算の改革ではリスクを管理し、攻撃を妨げるこの創造的なアプローチを追求する機会が与えられている。もし米国の防衛リーダーたちが機会を追求しなければ、米国軍はまさに一つの技しかできない馬になりさがり、他国への約束を全うすることができず、激化する多極的な安全保障競争で無用化するだろう。

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